Vol.678「ひよこ」
幼い頃・地元のお祭りで”ひよこ釣り”の露店があった。
弟は興味津々でひよこを釣り上げ・自宅に持ち帰った。
数日はとても良く可愛がり面倒をみていた。
しかし・幼い子ども。
飽きるのも早い。
代わりにおばあちゃんが根気強く飼育していた。
ひよこはやがて成長し親鳥になった。
最終的に大きくなった鳥たちは屠殺場へ連れて行かれた。
鳥たちは変わり果てた姿で戻って来た。
世話をしなくなった弟は泣いていた。
知人が譲り受け・美味しく食べてしまった。
それから一時・私たち兄弟は鳥を食べれなくなった。
鳥に罪はない。
世話してくれたおばあちゃんに感謝しなくてはならない。
食してくれた知人にも感謝しなくていはならない。
露店で出逢った・小さな命。
大人となった兄弟は忘れてはならない。
おもちゃではない。
同じ命。