Vol.787「決断」
ある市の市長が任期を待たずに辞職する事を発表した。
理由は奥様の介護だった。
市政のトップとして責務を全うする事なく職務を退く決断に賛否が別れた。
会見で市長は自己都合による辞職説明に際し・深々と頭を下げ謝罪した。
「家内には私しかいない」。
「私の残りの人生を妻に捧げ・彼女と共に生きたい」。
会見の最後に市長はそう発言して会見を閉めた。
会見を終え退室する市長は・どこか晴れやかだった。
後日奥様の車椅子を押す元市長の写真が新聞に掲載されていた。
彼に一票を投じた市民の中には納得出来ない有権者もいるかも知れない。
重責を中途で辞する決断は想像以上に苦難であったと察する。
その中での決意。
私は頷きながら会見を聴いた。
そっと静かに拍手を送った。