Vol.817「初物」
家内と二人久し振りに電車に乗った。
少し混んでた車内。
一つ席が空いた。
若いカップルの横。
家内を促し座らせる。
程なくカップルの男の子が席を立つ。
「どうぞ・・」。
私は席を譲られた。
「あ・ありがとう」。
私は軽くその子に会釈し家内の隣に座る。
微笑む妻。
やや苦笑の私。
若い二人は私たちより先に電車を降りた。
小さな親切。
初めての経験。
まさかこんな日がこんなに早く私に訪れようとは。
家内と電車を降りる。
エスカレーターは使わず颯爽と階段を降りる。
微笑む家内。
無言の私。
背筋伸ばして我が家へ歩く。